どんな疾患?

中高年の2人に1人に当てはまり、女性に多い

  • 日本では、変形性膝関節症による膝の痛みを抱えている患者さんの数は約800万人と推定されています。
  • 痛みの自覚症状は無いものの、レントゲン所見上の異常が認められる推定有病者数を含めると、その数は約2,500万人にも達します。
  • 特に50歳代以降の中高年に多く、この年代の2人に1人が当てはまることになります(性別は女性に多く見られます)。

変形性膝関節症の有病率

時間をかけて徐々に進行する

  • 変形性膝関節症は、膝の関節軟骨にできた小さな傷から始まります。この傷が長い年月をかけて徐々に広がったり磨耗したりすることで進行し、痛みを増していきます。
  • 進行期には、軟骨の損傷に加えて骨の変形もきたすようになり、やがて膝の曲げ伸ばしも困難になります(骨の変形の結果、O脚やX脚といった症状も顕著になってきます)。
  • 末期には、痛みと骨の物理的な変形が相まって、関節の可動域はさらに縮小します。

変形性膝関節症の病態と症状

変形性膝関節症は将来介護を必要とする大きな原因一つ

  • 痛みの継続と関節可動域の縮小は、日常生活の自立を妨げます。
  • 実際、日常生活で介護者の支援が必要になる理由の第1位は、変形性膝関節症をはじめとする「関節疾患」でした。
  • 筋肉や関節、骨といった運動器の機能低下に起因するものまで含めると、その割合は全体の約半数(48.6%)に達します。
  • ただし、適切な治療によって痛みを抑えたり、病態の進行を遅らせることは可能です。

要支援の原因疾患

こんな人は要注意

変形性膝関節症になりやすい人には、次のような特徴があります。

  • 女性(閉経後)
    閉経後は、骨、軟骨、筋肉を丈夫に保つ女性ホルモン(エストロゲン)が激減します。
  • 肥満
    体重増が膝への物理的な負担になるだけでなく、内臓脂肪から分泌される物質が膝の炎症を引き起こし、軟骨を壊れやすくします。
  • スポーツや仕事などでよく膝を使う:
    膝にどれだけ大きな負担をかけてきたか、その負担がどれだけ続いていたかは、発症時期や重症度に大きく影響します。
  • O脚やX脚
    O脚やX脚の膝は、内側と外側でかかる圧力にばらつきがあります。強い力が加わる部分は軟骨の損傷が進行します。
  • 重い荷物を頻繁に運ぶ
    重い荷物を持つと、それだけ膝にかかる負担は大きくなります。日常的に膝にかかる負担が大きいと、リスクは高くなります。
  • 脚の筋肉量が少ない
    膝関節周辺(太ももやふくらはぎ)の筋肉は、膝を動かすだけでなく、膝関節への負担を減らす役割も担っています。
  • 近親者に変形性膝関節症の人がいる
    さまざまな研究の結果、変形性膝関節症になりやすい遺伝的素因があることがわかっています。

発症の原因は?

発症の契機は関節のクッション機能の不具合

  • 歩行時、膝には体重の3〜8倍の力が加わります(階段の上り降りなどの際にはさらに大きくなります)。
  • 正常な膝では、軟骨や半月板がクッションとなって関節にかかるこうしたストレス(重み)を適切に分散させています。
  • 軟骨や半月板がダメージを受けると、このストレスの分散がうまくいかなくなり、局所的に強い圧力がかかります。
  • 変形性膝関節症は、こうした状態が長期間続くことで発症します。

変形性膝関節症の膝へのダメージ(イメージ)

軟骨が損傷する原因は大きく2つある

  • 変形性膝関節症は、軟骨損傷に特定の原因がなく、加齢とともに膝関節の軟骨がすり減った結果生じるもの(一次性)と、リウマチや痛風、外傷などのはっきりした原因があって発症するもの(二次性)に分類されます。
  • 頻度としては、圧倒的に一次性の方が多いです。
一次性変形性膝関節症の原因
・加齢による関節の変化(関節軟骨のすり減りなど)
・肥満
・職業
・遺伝
・生活環境
二次性変形性膝関節症の原因
・炎症性疾患:関節リウマチ、化膿性関節炎
・腫瘍性疾患:滑膜性骨軟骨腫症、色素性絨毛結節性滑膜炎
・外傷:靭帯損傷、半月板損傷、骨折
・壊死性疾患:大腿骨顆部壊死
・その他:神経病性関節症、骨系統疾患、代謝・内分泌疾患

どうして痛みを感じる?

膝関節の構造

  • 膝関節は、太ももの骨である大腿骨(だいたいこつ)、すねの骨である脛骨(けいこつ)、“膝の皿”と呼ばれる膝蓋骨(しつがいこつ)という3つの骨と、それらをつなぐ強い繊維の束(靭帯)で構成されています。
  • 軟骨と半月板は、膝関節にかかる負荷を軽くするクッションのような役割を果たします。
  • 関節全体は関節包(かんせつほう)という袋状の組織で覆われています。その中は関節液というヒアルロン酸を含む粘り気のある液体で満たされています。
  • まとめると、骨と靭帯が膝の形を整え、軟骨と半月板が関節にかかるショック吸収の役割を担い、関節液は関節の動きを滑らかにする潤滑油のような役割を果たしています。

健康な膝

痛みの原因は関節内部の炎症

  • 膝の軟骨は、加齢などの影響を受けて、少しずつすり減り、しだいに表面が毛羽立ったような状態になります。また、ケガなどによって関節に無理な力が加わることで、半月板が傷つけられることがあります。
  • こうして削り取られた軟骨や半月板のかけらは関節液に散らばって、関節包の内部組織(滑膜:かつまく)を刺激します。
  • この刺激で炎症が起こり、痛みを感じるようになります。

変形性膝関節症の膝


<Column>
膝に水が溜まるのはなぜ?

変形性膝関節症ではしばしば膝に水が溜まりますが、その原因も膝の炎症にあります。
炎症を起こした滑膜は、軟骨や半月板のかけらなどの異物を排除しようと、リンパ球や白血球を含む関節液を大量に分泌するのですが、これが「膝に水が溜まった」状態なのです。
水が溜まらないようにするには、治療によってまず炎症を抑える必要があります。

膝に溜まる水

診断の進め方と治療法

診断の進め方(次の手順で進めます)

  1. 問診/視診:症状の程度や日常生活への影響度などを確認します。
  2. 検査:関節液の抽出検査や、レントゲン検査、MRI検査を実施して状態を詳しく調べます。
  3. 治療開始:診察や検査の結果を受けて、最適な治療法を選択します。

治療法(状態に応じて選択します)

  • 保存療法:比較的初期に行う治療で、運動療法、薬物療法、物理療法(温熱/寒冷療法)などです。
  • 手術療法:日常生活に支障をきたすレベルの症状の場合に検討されます。
  • 再生医療:自己組織を使って関節組織の修復を狙う新しい治療法です。

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